模擬患者って?
模擬患者(SP=Simulated Patient)とは、医療系の学生が医療面接や診察の練習をするときに、患者さんの役を演じる人のことです。指定されたシナリオに従って実際の患者さんのように振る舞い、医学生が適切に患者さんと接するための練習を手伝います。
模擬患者って何をするの?
- 受診の理由や症状
- 配慮しつつ上手く聞き出す練習相手
- 頭、胸、腹、手足、脳神経
- 視診、聴診、打診、触診
- その他色々な診察方法
①医療面接(問診)
医師が患者さんに対して受診の理由や症状を聞くことを医療面接と言います。患者さんは医療のプロではありませんから、医学的に必要な内容を上手く聞き出せるよう、医学生は訓練しなくてはいけません。また、医療面接でのやり取りには患者さんにとって不安を伴うものや配慮が必要なものも含まれますので、どのように聞くかといった配慮も重要になります。このようなやり取りは、相手としての模擬患者さんがいなくては成り立ちません。
②身体診察
例えばおなかの診察と言っても、どのようにどこを触るかは教科書を読んだだけではわかりません。患者さんに診察に適した体勢を取ってもらうためにどう誘導するか、おなかを押す前にどのように声掛けをすれば患者さんの不安を軽減することができるかなども医師になるまでに身につけないといけません。
模擬患者の役割
①医学生の練習・訓練
SPは、演じる人の観点から医学生に対してフィードバックを提供することができます。これはSPが協力する学びならではのもので、医学生の対人能力、共感能力における重大な役割を果たすことができます。このとき、医学生の行動や振る舞いがSP自身に対してどのような気持ちを呼び起こしたか、信頼感を与えたかなど、SP自身の気持ちの動きを医学生にフィードバックすることが重要です(参考文献11)。一般的な患者さんの代表になるわけではなく、「あなた自身」がどのように感じたかを医学生に教えてあげることが大切なのです。このような役割は感情を持たないAIやロボットには決してできません。また、SPに適しているのが必ずしも医師や医学生自身など医療関係者ではなく、むしろ一般の方に広く御協力を呼びかけているのにもこの点が大きく影響しています。
②医学生の試験
もう一つの重要なSPの役割として試験実施への協力があります。合否の決定が大きな影響力を持つような試験では、SP は個々の医学生に公平で平等の機会を提供することができるように、標準化された方法で訓練されることが必要で、この際に活躍するSPは「標準模擬患者」と呼ばれます(参考文献22)。
本邦ではすべての医学生が受験する共用試験・OSCE(客観的臨床能力試験)と呼ばれる実技試験が公的化され、進級するための必須要件となりました。医学生の人生に関わる試験を不公平なく公正に行うためには、実技試験に協力する模擬患者が一定の対応をする必要があります。そのため、この場合は自由度の高い豊かな感情のフィードバックではなく、詳細なシナリオを暗記しルールに則った一定の演技を安定して行う能力が求められます。(参考文献33)。
- 参考文献1)Berenson LD, Goodill SW, Wenger S. Standardized patient feedback: making it work across disciplines. J Allied Health. 2012;41(1):e27–31 ↩︎
- 参考文献2)Lewis et al. The Association of Standardized Patient Educators (ASPE) Standards of Best Practice (SOBP). Advances in Simulation. 2017; 2:10 ↩︎
- 参考文献3)公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構ホームページ ↩︎
京大模擬患者の会について
京都大学医学教育・国際化推進センターでは、勉強会を定期的に開催するなどして模擬患者の育成を実施しています.そして京都大学医学部4回生の「臨床実習入門コース」で実施する医療面接,並びに医学教育の研究(身体診察法や診断学)補助として,患者役を演じて頂いています.また、臨床実習開始前の共用試験・OSCEにおける医療面接試験においても試験のための患者役を演じて頂いています.京都大学には標準模擬患者養成担当者が在籍しており、認定標準模擬患者の資格を得るためのサポートを行うことが可能です。
模擬患者の募集
京都大学医学教育・国際化推進センターでは、模擬患者として学生教育にご協力頂ける方を募集しています。
※70歳までの方(数年トレーニングをしていただく必要がある為)
※PCメールでファイルのやり取りが出来る方
ご興味のある方は下記まで御連絡ください。
TEL:075-753-9454
FAX:075-753-9339