日本の医学教育は大きな変革期を迎えています。医療・医学のグローバル化を踏まえ、日本の医学教育も世界基準を満たした教育内容が求められる時代に突入しております。
そのような現実を踏まえ、医学教育・国際化推進センターでは京都大学の校風である「自由の学風」を大切にしつつも、世界の医学教育の趨勢に対応すべくカリキュラムの改革を推進して参りました。具体的には、73週の参加型臨床実習を実施するなど、2017年改訂医学教育モデル・コア・カリキュラムに対応し、かつ、「学生さんたちの自由を尊重しつつ多くの世界をリードする国際的な医学研究者・医療人を育て輩出する」という京都大学の使命を踏まえたカリキュラムの策定を行いました。
MD研究者育成プログラムや、一定期間、学内あるいは海外で研究に従事するマイコースプログラムなど、研究マインドを持ち世界の医学研究をリードする人材の育成を目指すプログラムの充実を進め、その結果、2018年9月には日本医学教育評価機構(JACME)から世界医学教育連盟(WFME)の国際基準を踏まえた医学教育プログラムであるとの認証を受けることができました。
しかしながら、刻々と変化する時代に対応すべく、医学教育も進化し続ける必要があります。例えば、医学教育の理論、実践の多くは欧米諸国発であり、日本の国情、日本人の気風に即し、かつ世界基準を満たした優れた日本型の医学教育を編み出すことが不可欠です。また、医学・医療の急速な発展は、旧来の生物学的な視点からのみでは不十分で、工学、情報科学などの視点も含めた包括的な医学教育の確立が喫緊の課題となっています。
そのような状況を踏まえ、京都大学医学部では看護師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師などの国家資格を有する医療人を養成する学科である人間健康科学科を、国家資格を持つ医療従事者のみではなく、現代・未来の医療に不可欠な人材の育成を目指した学科に改組いたしました。
医学教育・国際化推進センターはこれまでの医学科の教育を中核的に統括し、その成果を踏まえて京都大学発の医学教育研究を推進するとともに、人間健康科学科とタイアップした新しい医学に対応できる包括的な医学教育の確立、さらに、医学研究科所属の外国人教員との連携による国際化の推進など新たな取り組みに着手しております。
これらの医学教育に対する革新的な取り組みを通して、京都大学から独創的な医療や研究成果を発信して日本・世界をリードする医学者・医学研究者を数多く輩出することを目指しております。このような本センターの取り組みに対して、医学教育に興味を持つ方々、医学部の学生さんなどから数多くのフィードバックをいただけることを願っております。
医学教育・国際化推進センターのHPへ ようこそ。このセンターでは、医学部学生の学習支援、カリキュラム改革のためのコーディネーション、教育人材の育成などを中心に活動しています。
大学医学部における教育とは何かを考えることは重要です。それは大学の存在意義を問うことです。京都大学医学部の理念と目標には、優秀な臨床医とともに次世代の医学を担う医学研究者、教育者の養成を責務とすると明記されています。
医学部以外では、実験やゼミなどを通じてそれぞれ専門性のある教育を多くは少人数で行っています。一方の医学部では、職業人養成という特性も加わり、学習項目が非常に多岐に亘るうえ、授業はほぼすべてが必修です。授業は各講座・分野によって通年でなく一時期に100名超の学生を相手に行われます。このような医学部の特徴は、一方で、細切れの授業や教育に対する責任の所在の不明確さを作り出す素因となりえます。
多くの国で、医学教育を専門とする部門が独立して活動しているのは、上記の理由が挙げられますが、さらに大切なことは医学教育者を育成するためでもあります。これまで多くの医師は、医学を学んできたものの、教育の仕方を学んだことはありませんでした。医師はプロフェッショナルとして、自律的に後進を育てることが求められます。そのために、医学教育部門は必須なのです。医学教育・国際化推進センターは、“教育と学習についての学習”を深めて、優れた医学教育者を生み出す使命をもっています。教育に対する情熱こそ、次代の医学・医療の質を高めることを多くの人は知っています。
京都大学医学教育・国際化推進センターは、このような目的のもと平成16年に設置されました。教育ビジョンの一貫した学習環境を作って優れた臨床医・医学研究者を輩出するとともに、医学教育者を育成することを使命としています。
小西 靖彦